2022 手賀沼水生生物研究会紹介を更新しました。

手賀沼水生生物研究会紹介
2022年現在手水研の活動は主に4つ。

「手賀沼親子自然観察会」、
「手賀沼の調査活動」、
「勉強会」、
「希少種保全活動・四つ池保全活動」です。

4番目の「希少種保全活動・四つ池保全活動」に
ついてお話しします。
きっかけとなったのは、2003年に日本トンボ学
会と我孫子野鳥を守る会がNEC我孫子事業場内
にある四つ池で行った調査でした。
この時絶滅危惧種である希少トンボのオオモノ
サシトンボが見つかっていましたが、保全のた
めには環境がどうなっているか調べる必要があ
り、2007年、調査に参加されていた我孫子野鳥
を守る会の元会長で、当会発足のきっかけとな
ったバス駆除活動にも参加されていた元会長
さんに依頼され、四つ池環境調査に参加しまし
た。
このとき、オオモノサシトンボとともに外来魚
が多数生息していることが分かり、リスク管理
の観点から、当会がこれらの駆除活動を開始し
たのが始まりです。
振り返ればもう15年前になります。


オオモノサシトンボのペア

四つ池保全活動では、結果が目に見える保全活
動ができることから、研究者の方々といろいろ
な方法でアプローチを試みることになります。
アプローチの方法をいくつかご紹介すると、
まず駆除釣りです。
次にトラップを仕掛け定期的にチェックをす
る。
人工産卵床や産卵防止ネットという方法や小型
定置網も試みました。またトンボの住みやすい
環境づくりにも腐心しました。

2012年には、四つ池最上流のD池で2週間連続
の池干しをおこないました。
その際、のちにゼニタナゴ野生復帰事業を展開
するきっかけになる二枚貝500体の生息を偶然
にも確認しました。


2012年12月2日 完全に水を抜いた四つ池D池

しかし翌年、台風26号によって四つ池が冠水
し、池干し後の池に再び外来魚が入り込んで
しまう事態が発生。活動は振り出しにもどり
ます。

転機が訪れたのは、2015年、7年前です。
当会会員でもある土浦自然を守る会の方から
50匹の利根川水系由来のゼニタナゴをもらい
受けたことです。
この個体群は、元観音崎自然博物館(神奈川県)
館長の故・石鍋壽寛氏が関東のゼニタナゴの絶
滅を危惧して1989年に霞ヶ浦美浦の湖岸で捕獲
し、琵琶湖博物館で継代飼育されていたもので
す。

2011年の千葉レッドデータブックには、ゼニタ
ナゴについて以下のように記載されています。

「【県内の状況】タナゴ同様、利根川水系を中
心に分布していたと推定されるが、近年急激に
減少してきた。減少原因はタナゴとほぼ同様で
ある。
今回の見直しでの調査でも利根川低地での生息
が確認できず、絶滅あるいはそれに近い状況に
なったと考えられ、2006年改訂版に続き、消息
不明・絶滅 (X) に変更した。」
そして千葉県の2019年の改訂版でも、ゼニタナ
ゴはX 消息不明・絶滅生物になっています。


ゼニタナゴ♂

故・石鍋氏が保護したゼニタナゴは、霞ヶ浦市
民協会、土浦の自然を守る会を経て当会へ譲渡
されました。これらのゼニタナゴは遺伝的に関
東集団として確認済みです。
2015年、その貴重な子孫たちの飼育を我孫子事
業場内にある人工池で開始し、翌年春 ゼニタ
ナゴ稚魚が見つかり繁殖が確認できました。

しかし地域絶滅した生き物を、野生復帰させる
には、実は大変なハードルがいくつもありまし
た。

そのいくつかをご紹介すると

① まずゼニタナゴの飼育です。人工池には、千
葉県中央博物館からリスク分散のため移譲され
た手賀沼絶滅種ガシャモクや四つ池に生えてい
たエビモを入れ、植物食のゼニタナゴの餌とし
ました。これらの水草は刈り取る必要があるく
らい繁茂し、ゼニタナゴの餌の心配はなくなり
ました。しかしタナゴの産卵母貝となる二枚貝
が、エサであるプランクトンの珪藻類の不足の
ため、春になる前に餓死してしまうことが判
明。人工池でのゼニタナゴ繁殖は停滞が続きま
した。

この難題の解決には数年かかりましたが、その
方法はちょっとした企業秘密です。知りたい方
は、ぜひ当会に加入して活動にご協力ください

② 2019年1月に満を持してふたたび上流2つの
池で池干しを実施。しかし肉食魚がいなくなっ
たことにより、池の環境自体を壊す アメリカ
ザリガニが激増。人力によるトラップでの捕獲
では、増加を食い止めることはできませんでし
た。
しかし各地で保全団体がザリガニ問題に頭を抱
える中、解決のための一つの試みである利根川
の天然ウナギの導入では、手賀沼漁協組合員の
方のウナギ捕獲のご協力を得て、うまくいき
つつあります。


2021.7.25 利根川でのウナギ漁に参加

③ 2020年は新型コロナによる活動自粛のため、
2019年秋の大雨による四つ池冠水の状況が把
握できない状態でした。2021年からNEC側の計
らいもあり、活動ができるようになりましたが
、池干しした最上流の池で外来生物が大繁殖
していることが判明。
また振出しに逆戻りです。

これらの困難な状況を解決するいくつもの試
みの中で一番効果的だったのは、実は駆除釣
りでした。釣り名人の揃った東京勤労者つり
団体連合会(東京労釣連)や法政大学のボラン
ティアの皆さんのご協力、そして当会会員の
たゆみない尽力により、外来魚の駆除が進み、
今年2022年10月2日には星野順一郎我孫子市長
と我孫子市民をお招きして、人工池のゼニタナゴ
をD池に放流する「利根川水系ゼニタナゴの
野生復帰」のイベントを開催することができ
ました。


2022.10.2 星野順一郎我孫子市長をお招きして
の利根川水系ゼニタナゴの野生復帰イベント
四つ池D池

外来魚は一度入れられたら、もう手の施しよう
がなく、共存して利用するしかないと某有名釣
りキャスターが発信されていますが、
私は別意見です。
環境保全に関心のある釣り人の自発的協力さえ
あれば、外来魚の影響を最小限に抑えることは
可能です。
四つ池におけるゼニタナゴ野生復帰活動は、そ
の実証の一つになったと思います。

NECとの協働によるこの活動は多くの皆様のご
協力により

2022年度自然
保護大賞の選考委員特別賞
https://www.nacsj.or.jp/award/result.php
を受賞し、

また、2022年度の千葉県文化の日功労賞の
環境功労章を日本電気株式会社(NEC)ととも
に受章 しました。


2022.11.3 千葉県功労者表彰で環境功労を受賞

NEC公式SNS
https://twitter.com/NEC_jp_pr/status/1589422492992819203

https://www.facebook.com/necjapan/photos/a.524447527577990/5954205754602113/

また希少種の保全されている四つ池は、次期
生物多様性国家戦略のカギとなる自然共生サ
イトの候補地(30 by 30)
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
にも選定されました。

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